別れさせ屋黎明期(20年前のこと)ー 前編 ー

皆さん「探偵」という職業にどんなイメージをお持ちですか?

サスペンダーを愛する帽子と丸いサングラスの男?・・・それは松田優作です。その格好で尾行した日には、間違いなく世間の注目が集まるでしょう。

探偵をやる人って一体どんな人なのかもわからない。一般的には遠い存在ですよね。

ということで、時を20年前に遡り、藤木社長の下積み時代〜失敗談まで恥ずかしい話も暴露してもらいましょう。

なんで探偵になったの?

 

ライター>藤木さん、今日は読者のみなさんに代わって、素朴な疑問を色々聞かせていただきます。まず根底のところで、探偵になった理由を教えてください。どんな人が探偵を目指すのか見当も付きません。

藤木さん>理由かぁ……。理由はすごく単純! 探偵になったら、尾行とかよく刑事ドラマとかで見るようなインカム付けてパン咥えながら張り込むとか、そういうことができるだろうから楽しそうだなと思ったんだよね。

ライター>え・・・。そんな安易な・・・。

藤木さん>そもそも別れさせ工作っていうのがあることも知らずに探偵業界入ったから……。自分では浮気調査やってるっていうイメージしかなかったし。実際に入ってみて、ちょくちょく工作に携わるようになって、「何ソレ?」って思ったね。別れさせたいとか、復縁したいっていう依頼を受けてるってどういうこと!?って。そんなことできんの!?って驚いた。

ライター>ということは20年前から「別れさせ屋」のサービスがあったということですね!

藤木さん>とはいえ当時は依頼を受ける側も手探りだった。これってお客様のニーズがあって生まれたものだから。「別れさせることってできます?」「やってみましょう!」で生まれた業界なんだと思う。

ライター>ふ〜ん。その頃どんな工作が主流だったのかすっごい興味あります。

とにかく何でも試した下積み時代

 

ライター>実際に仕事の内容ってどんなものだったのですか?

藤木さん>まず真っ先に現場スタッフができることといったら事前調査、ターゲットについて調査することから。浮気調査、素行調査と同じで尾行して撮影してた。

社長も依頼受けておきながら現場に丸投げで、とりあえず異性を近づけてナンパさせろっていう指示だった(笑)

ライター>確かにちょっと無理があるような・・・。

藤木さん>最初の頃なんか無視されてたしね。しつこくして警察呼ばれそうになったりとか(笑)まだストーカーっていう言葉がない時代。工作員近づけたけど無理でした、ハイ終わり。みたいな。今は考えられないけど、実際ノウハウもなかったし本当に手探りだった。どうやったら接触できるんだろうって自分なりに色々試したよ。

それが業界の最初の頃の話。

ライター>具体的にどんなことを試したのですか?

藤木さん>当時は、ベタだけどナンパしたり、目の前で小銭こぼしてみたりとか。連絡先を聞くという概念すら無かったから。でもそれだけじゃうまくいかないから、ターゲットの自転車のチェーンを予め外しておいて、困ってたところで直してあげるとかね。日々手探りだったわけですよ。

ライター>それ、ベタな80年代のトレンディドラマですね。その後思わぬところで必ず再会するやつ。

藤木さん>まぁそんな頃にSさんという強面の依頼者と出会った。自分の娘がひもみたいな男と付き合ってるから別れさせて欲しいっていう依頼だったんだけど。

依頼者Sさん。非常に興味深い登場人物です。手探りだった藤木社長に、この後どんな展開が待っているのでしょうか。続く。