別れさせ屋黎明期(20年前のこと)ー 後編 ー

さて、若かりし頃の藤木社長に迫る「別れさせ屋黎明期」。

前編で、強面の依頼者Sさんに娘とその彼氏の「別れさせ」をお願いされた藤木社長。この人との出会いがそれまで手探りだった工作に大きな変化をもたらしたようです。

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藤木さん>まぁそんな頃にSさんという強面の依頼者と出会った。自分の娘がひもみたいな男と付き合ってるから別れさせて欲しいっていう依頼だったんだけど。それで、さっき話したような工作やって、ダメでしたって報告する度に「そんなんで成功するわけねーだろ!」っておしかりをいただいて。「もっとプロらしくやれ!」って(笑)

それからプロらしくってなんだろうとか、どうやるんだろうとかすごい考えた。

ライター>へー!その人、藤木さんの人生を変えたキーマンっぽい雰囲気漂ってます。

藤木さん>ある時、娘さんのビッグスクーターの上にいかにも柄の悪そうな工作員を座らせておいて、娘さんが絡まれそうになったところで自分が登場して助けるっていう工作をした時に、依頼者の「鬼のダメ出しSさん」が、「それそれ!俺が求めてたのはそういうのだよ!」って褒めてくれて、嬉しかったなあ。もっと色んな方法を考えようって思った。

そもそも、ナンパだったり小銭落としたりっていう一瞬の出会いをきっかけに何とか関係構築しようと思ってたのが最大の間違い。それで仲良くなることなんてそうそうないし。だから張り込みの時間に毎日ネタをノートに書き留めてた。相当な数の別れさせ工作を担当してたから、調査〜工作〜案件担当まで全部やらせてもらって。自分でなんとか成功させなきゃっていう思いだったね。

業界の体質は昔から変わってない

藤木さん>それから、もっと調査に力入れようって現場まとめてたら、社長役員から煙たがられて、結局やった体でお金もらえればいいじゃんって。いや、でもそれってお客さんと直接接してないからそうなるんだよね、解決しようなんて微塵も思ってないじゃない。

俺は適当なことしてお客様から「それは聞いてない」とか「こう言われた」って言われるのがすごい嫌だった。一番接するのは面談する人じゃなくて担当者だから、本当はもっとこうしたいのにってことも沢山あったよ。今にしてみると反面教師で今のやり方を確立できたから良かったと本当に思う。

ライター>工作をやったことにしてお金を取るっていう会社は、今も昔も存在するんですね。

藤木さん>業者も楽したいからなのか、本気でやってるのかわからないけど、何十年経ってもびっくりするくらい同じことをずっとやってる。

工作プランて「何でこのプランなの?」って聞かれた時に、理由を言えなきゃいけないと思うんだよね。でもうちに来る人の話聞いてると、他の会社って大体3パターンくらいのうちどれかを選択するっていう仕組みになってるんだと思う。

ライター>例えばどんな内容ですか?

藤木さん>例えばコンビニでわざと車の下にケータイ落として、動かしてほしいってターゲットに接触するとか、タクシーに携帯置いてきちゃったから電話させてほしいとかね。本当にみんな同じことやってるよ。

それで失敗したっていう相談者さんに、「これでターゲットと仲良くなれると思います?」って聞くと、「依頼したときにはプロに任せてるからどうやるかわからないし」って言うんだけど、「じゃあそういうことをきっかけに仲良くなった人って、自分で今何人います?」って聞くと「いません」って返ってくるんだよね。

うちより安くて良い工作やってくれる会社があるんだったら、絶対そっちに頼んだ方が良いって言い切るんだけど、実際にはちゃんとやってる会社を聞かない。

ライター>そういう会社に頼むと、依頼した後どうなるのですか?

藤木さん>画像が無い報告書を挙げてくるとか、突然担当者と連絡がとれなくなるとか。業界全体が騙し体質から抜けようとしてないと思う。だからそういう業者は裁判起こされてるし、被害者の会作られてるし、公安からマークされてる。

うちは年1回の立ち入り調査で契約書とかも全部見られた上で「アクアさんがちゃんとやってるのは知ってる」って言われてる。弁護士さんが依頼人を紹介してくれるくらいね(笑)

ライター>それは面白いですね。弁護士さんが紹介するって、それだけ信用できる証拠がないとしないでしょう。

業界を変えたいわけじゃない

 

ライター>藤木さんがこうして、ここまで発信し続けるのはどうしてですか?

藤木さん>アクアが他の業者と同じだと思われるのが嫌だから。一生懸命やってるスタッフに申し訳ないでしょう。9割9分がろくでもない業者だから、いくらうちがちゃんとやってても大多数には負けるし、同じ目で見られてしまう。

ライター>どうか見極める術を持って欲しいですね。依頼者の方には。

藤木さん>会社を大きくしたいわけじゃないし、業界を変えたいっていうのもないんだけど、騙される人をなくしたい。こういうことを書くとさ、痛いところを突かれたと批判する会社もあると思うけど、そんなのはいくらでも書けばいい。それはその通りだという裏返しだから。どっちを信用するかは自分で選んでください。僕らは自分が正しいと思う事を貫き通してきてるから。

他社を批判する暇があるならもっとまともな工作やれ。こっちは朝まで依頼者に付き合ってプラン考えてるんだ、と思う。

今回で少し藤木さんの人間性が見えた気がします。探偵という職業にちょっと親近感が湧きました。しかし、まだまだ知りたいことは山ほどあります。次回も宜しくお願いします。